Vol1.「組織に必要なアンラーニング(学習棄却)」 担当:渥美 (2018年1月24日)

■ 自分たちの当たり前を疑ってみる

 

先日、ある法人で「ここが変だよ〇〇会」というテーマで、

丸1日かけて法人のマネージャークラス全員が集まって話し合いをする場がありました。

 

このような場が開かれた背景は、トップの「風通しが悪くなっているのでは」

という違和感からでした。

 

具体的には、組織の中で重要度が高い情報が上がってくるスピードが遅く、

報告があった頃には対処が不可能な状態まで悪化している。

 

部署にとってマイナスになるような情報が上がってこず、

部署では解決が困難なことでも他部署や上層部に協力を要請するような相談がない。

 

このような事象が相次ぎ、「組織内で情報がコントロールされ、

本当に必要なことが職場で語られなくなってきているのではないか」

という違和感が生まれたようです。

 

人と同じように組織にも年齢があります。組織が一定の規模を超え、

かつ組織年齢が積み重なると「大企業病」という症状が発生しやすくなります。

 

大企業病とは、一言でいえば「組織のコミュニケーション障害」です。

 

組織の規模が大きくなり、階層が増えることで情報伝達のスピードが遅くなる、

現場の感覚と経営層の感覚の乖離が大きくなる、直接的なコミュニケーションの機会も減る、

 

その結果、意思決定が遅くなる。

 

また、組織としての経験が積み重なることで、自分たちにとっての「当たり前」が強化されていき、

「〇〇であるべき」という自分たち組織にとっての正しさができていく。

 

そして、その正しさに反する価値観や少数派の意見は排除されるようなるため、

次第に本当の話をすることは危険だと感じ、周囲に適応するために空気を読んだ発言をするようになる。

 

このような状態が続くと、徐々に組織は硬直化していき、環境変化にできず、

大きな危機を迎えることになります。

 

経営学者である野中郁次郎氏は、著書「失敗の本質」の中で、

旧日本軍が勝ち目のない太平洋戦争の参戦をなぜ決断したのか、なぜ負け戦を繰り返したのか、

旧日本軍の敗因の要因を経営学的視点から分析しており、

 

その大きな一つが「空気」や「同調圧力」であったとことを言及しています。

 

この法人では、誰よりもトップ自らがその違和感にいち早く気づき、

どのような批判や不満が出てきても全部受け止める覚悟で、

 

今それぞれが何を感じているのか、これまで組織として当たり前で通ってきたけど、

違和感があること、疑問を持っていること、変だなと感じていること、こうでなければならない、

こうしなければならない、こうしてはいけない、

 

といったことについて、皆でオープンに話し合う場を持つことになり、

その場をコーディネートさせていただくことになりました。

 

■ 継続的な成長に必要なアンラーニング

 

組織の継続的な成長に必要なのは「アンラーニング(unlearning)」と言われています。

 

アンラーニングとは、「学習棄却」と訳されますが、いったん学んだ知識や既存の価値観を意識的に棄て、

新たに学び直すことです。それよって、初めて新しい価値観や考え方を取り入れることができます。

 

しかし、学習棄却は簡単ではありません。

 

なぜなら、それは自分たちがこれまでの経験から強化されてきた成功パターンであり、

信じて疑わない価値観だからです。

 

それを否定することは、即ち死を意味します。

 

だから簡単には手放しません。

 

むしろ、それを否定されることは自己のアイデンティティに関わってくるため、

防御はますます強固になります。

 

特に一定のキャリアを積んできたマネジメント層ほどこれまでの経験やプライドが邪魔し、

変化を拒みます。成熟した組織が変わりにくい理由がここにあります。

 

これだけ自分は努力しているのに、これだけみんな一生懸命やっているのに、

なぜか良い結果に繋がらない、これは過去のパターンが通用しなくなっている一つのサインでもあります。

 

そのような時こそ、あらためて自分たちの当たり前を疑ってみることが大切ではないかと思います。

 

しかし、当たり前とは、自分たちにとっては馴染みがありすぎて気づかないことがほとんどです。

人は自分の家の臭いは気にならないけど、他人の家の臭いには敏感に気づきます。

 

それと同じ空気なようなものです。

 

自分たちの空気に気づくための一番シンプルな方法は、

 

「私たちの職場で変だなと感じることある?何か違和感ある?」と新人職員の声に耳を傾けてみることです。

 

経験上、最も違和感を持っているのは、まだ真っ白な状態の新人だからです。

 

私が新入社員の時、ちょうど入社して一年経過した頃に、

一年間の職場で感じた違和感を上司・先輩の前でプレゼンするという機会がありました。

 

ハッとする先輩の姿、反論してくる上司の姿、様々な反応があったことを覚えています。

 

これは一つの例ですが、まずは、自分たちが当たり前と思い込んでいることは何か、

正しいと思っていることは何か、そこに気づくことに、組織が変革していく糸口あるのではないかと思います。

 

■ 正しさのマネジメントから降りる

 

正しさとは、ある一定の環境下における大多数の合意であり、

その環境や状況が変われば、簡単に崩れてしまうほど確信のないものです。

 

様々な組織に関わらせていただく中で感じるのは、それぞれの立場で、

それぞれの人が自分が正しいと思っており、それを信じて疑いません。

 

しかし、それはある一面から見た正しさであり、

間違ってはいないかもしれませんが、全体を表すものではありません。

 

そして、ある正しさを立てれば、別の正しさが必ず抵抗勢力として立ち上がります。

正しさの先にあるのは、支配と対立しかないのでないかと思います。

 

では、私たちはなぜそんな確証のないものを信じるのか、

 

仮にもしその正しさが通用しなくなった時、私たちは何を拠り所にすればよいのでしょうか。

 

正しさや正解を求める人は、迷子になりやすい

 

昔、ある人がそう言っていました。

 

私たちが信じるべきは、大多数の合意ではなく、過去の成功体験でもなく、

その瞬間瞬間湧き上がる、自分自身の中にある真実であり、皆の中にある真実ではないでしょうか。

 

外側にある物差しを拠り所とするのではなく、世の中の常識を正解とするのではなく、

自分の内側にある声を誰よりも自分が信頼することが必要ではないかと思います。

 

これだけ価値観が多様化し、唯一無二の正解がない時代の中、

正しさで人をマネジメントすることはもうできなくなってきているのではないかと思います。

 

私は、特に組織をリードするマネジメント層が、これかから時代、この正しさからどれだけ降りられるかが、

組織や人が本当の意味で成長していく上でとても重要ではないかと思います。

 

『世界がもし100人の村だったら』の原案者あり、

システム思考の第一人者であるドネラ・メドウズ氏は、

 

「従来の経験や考え方が通用しない、新しい変化が次々と起こる時代を生き抜くために最も大事なことは、

『従来の経験や考え方から自由になる』こと。そうしないと新しい変化を素直に見つめることができない。」

 

と言っています。

 

正しさから一段降り、その奥にある内側の声に耳を傾けた時、

これまでの延長ではない、全く新しい組織の展開を迎えることができるのではないかと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

※今後メルマガでの配信を希望される方はこちらから登録をお願いします。

https://x.bmd.jp/bm/p/f/tf.php?id=beelabo&task=regist